私は天使なんかじゃない








作戦会議





  動くのであれば作戦は必要。
  無意味に行動するよりも、意味のある行動をする方が効率が良いし生存率が格段に向上する。

  無意味な行動、意味のある行動。
  お好みでお選びください。






  《エイリアン》

  グレイ型の宇宙人。
  ビーム兵器を手にした一般兵士タイプ、監獄等を監視する看守タイプ、うにょうにょとしたバリアを纏った精鋭タイプなどがいる。
  人間と同じ様に様々な役目を負っているようだ。
  テクノロジーさえなければ肉体的には人間よりも脆弱。
  銀色の宇宙服を纏っている。


  《エイリアン・ワーカー》

  グレイ型の宇宙人で外観は上記エイリアンと同じ。
  基本的に労働者や技術者としての側面が強いらしく武器を使用すらしない。
  赤色の宇宙服を纏っている。


  《サポートドローン》

  宙を滑る様に移動する無人兵器。ロボット。
  その能力は近接戦闘のみであり戦闘型というよりは船内の装置のメンテナンス等の為に開発された側面が強い。
  船内のロボット工場で大量生産されている。
  自律的に動作するのではなくあくまで携帯型の制御装置で操作されているに過ぎない。


  《ガーディアンドローン》

  宙を滑る様に移動する無人兵器。ロボット。
  ドローンキャノンという広範囲炸裂型レーザー兵器を装備しているのでその攻撃力は高い。しかしキャノンさえ破壊すれば無力と化す。
  船内のロボット工場で大量生産されている。
  自律的に動作するのではなくあくまで携帯型の制御装置で操作されているに過ぎない。



  「以上よ」
  「ありがとう、サリー」
  自己紹介からそのまま作戦会議に移行した人類同盟軍。
  ……。
  ……人類同盟軍の命名のセンスなさは勘弁してください。あくまで暫定的な名称です。
  現在呼び名を絶賛募集中(笑)。
  さて。
  「大まかに分けて4タイプなわけ?」
  「そうよ、ミスティ」
  「そう」
  敵のタイプを教えて貰う。
  兵士タイプのエイリアン、技術者タイプのエイリアン、メンテ用のロボとバトル用のロボ。エイリアン兵士に関してはもっと細分化出来る
  けどとりあえず敵は4タイプに絞り込まれた。作戦を立てる上でとても大切で必要な情報だ。
  サリーが知っててよかった。
  私は戦闘では役立たずかもしれないけど戦略的に、戦術的に状況を見極めるのはそれなりに長けているようだ。
  ボルト101の授業でもそっちの分野ではアマタより上だったし。
  実戦での作戦立案は当然初めて。
  だけどそれなりに今までの勉強で得た知識は役には立ってる。
  仲間達も一目を置いてくれているらしく沈黙したまま私の立てる作戦を待っている。

  「セッシャハメイソウイタス。イジンタチヨ、ソナタタチハカッテニイミフメイノコトバヲシャベッテイルガヨイ」

  約1名、妙な台詞と共に正座して……ん?
  寝てる?
  寝てるの?
  何だかよく分からないけどサムライマンは正座したまま目を閉じた。まあ、何だかよく分からないけど静かなのはいい事だ。
  日本人の性質はよく分からん。
  「サリー」
  「何? 他には何が聞きたいの?」
  「ある程度でいいから教えて、この宇宙船の規模は?」
  「ここは凄く広いの。私も全部は見てないわ。もっと見ようとしてもいつも捕まっちゃうしね」
  「ここから通じる区画へは?」
  「3箇所行った。貨物室とメンテナンスルームには行った事ないけど」
  「3箇所」
  「冷却ラボには行った事があるわ。奴らは人間を凍らせて切り刻んだりしてるところよ」
  「ふぅん」
  誘拐した人間を冷凍して保存しておく場所であり解剖とか実験の場所ってわけだ。
  冷凍ラボはそういう性質の場所か。
  「ハンガーには奴らの飛行機とか飛行機に使う物とかがある場所ね」
  「ふぅん」
  飛行機、まあ、UFOって事か。
  私達に操縦出来るとは思えないからUFOそのものには興味はない。脱出に使えるとは思えない。操縦して地球まで連れて帰ってくれる気の
  良いエイリアンがいればいいけど、いないだろうしそもそも言語が通じないから話し合う事すら不可能。
  一見ハンガーは私達にとって無意味な場所だけどジェネレーターの1つがある。
  それの破壊は必要不可欠。
  行くのは確定。
  問題は向かう順番だ。
  「ロボット工場は奴らが金属の大きくロボットを作っている場所よ」
  「ふぅん」
  さっきサリーが言ってたドローンとかいうロボの製造場所か。
  真っ先に潰すべきはそこかな。
  敵の戦力を叩くなら供給を止めるのが先決だ。エイリアンは、まあ、人間と同じ方法で増えるのか、それとも分裂増殖するのかは知らない
  けどロボの生産スピードには劣るだろう。連中がロボを増産した場合を考えると真っ先に潰した方が良い。
  もちろん戦力的の比率は高い。
  私達に落とせるかな?
  この戦力で。
  「サリー、エイリアンは多い?」
  「ロボット工場?」
  「そう」
  「そうでもないよ。少なくとも私が行った時にはエイリアンはそんなにいなかった。ワーカーはたくさんいたけど兵士は少なかったかな」
  「ふぅん」
  エイリアン自体は少ない、か。
  ただし生産過程のロボとか完成品とかたくさんあるんだろうけどさ。
  
だけどやりようによっては叩き潰せるかもしれない。
  「……」
  「ミスティ」
  「……」
  「ミスティ」
  「えっ? あ、何?」
  「考え事? 一応言っておくけど一番大事なものは船のてっぺんにあるわ。まだ行った事ないけど」
  「そこがゴールよね?」
  「うん」
  「それでジェネレーターってどんなもの?」
  「大丈夫。見れば分かるわ。ボタンを押すの。そしたらこのおっきいのが、しゅぅぅぅぅぅって床から上がってくるの」
  「はっ?」
  「それから押し下げたら、しゅぅぅぅぅぅぅってなるから離れた方がいいわ。ま、見たら分かるわ」
  「そもそもそれを壊す理由は?」
  「あっ、言ってなかったね。パワーを切られたから上にはワープ出来ないの。だから宇宙服着て誰かが宇宙に出て、直接上の階層に
  忍び込むの。そこでパワーを入れて下の仲間達がワープ出来るように工作するの」
  「それは分かるわ。でも何故破壊が必要なの?」
  「外に出る為の扉は3箇所のジェネレーターの出力でロックされてるの。これは配線を弄っても開かないわ。宇宙に出るには破壊する必要
  があるの。それと同時に空気の供給にも関係してるの。3箇所破壊すれば空気の供給源はこっちが握れる」
  「なるほど。船の敵を全滅させれるわけね」
  「上は無理」
  「何で?」
  「システムが別だから」
  「ふぅん」
  「ともかく空気の供給をこっちが握れるの」
  「それってここの場所も危ないって事?」
  現在、空気供給システムは向う側が握ってるわけだから、その発想さえあれば私達を一気に全滅される事が出来るはずだ。
  サリーは首を振った。
  「それは大丈夫」
  「何故?」
  「ここはエンジンコアよ? 一番デリケートで、船の出力の根本。真空状態にしたらシステムが駄目になる」
  「そう」
  とりあえず空気の供給断たれて無残な最後は遂げずにいられるらしい。
  よかった。
  サリーにとってこの宇宙船は遊び場のようなものらしい。この状況を一番良く把握し、一番順応してる。
  状況次第ではエイリアンすらも手玉に取れるだろう。
  元々の素質なのか。
  それともエイリアンがこの子を改造……いや、やめよう。考え出すと怖くなるからやめよう。
  「エリオット」
  「何だ?」

  「治療は出来る?」
  「そうしたいのはやまやまだが、医療器具がなければどうにもならん。そこの民間医も同じような感じだろうな」
  「そう」
  まあ、当然かな。
  応急手当が関の山か。この状況下では仕方ないか。
  「ソマー、武器は?」
  「武器?」
  「ええ」
  「あんたが持ってるアサルトライフル、小型拳銃が6丁、コンバットショットガン、ナイフが8本、グレネードが12個、鹵獲したエイリアン兵器多数」
  「それだけ?」
  「以上よ」
  「弾丸は?」
  「50やそこらは殺せるだけはある。もっとも人間の数を前提に言っているだけで、エイリアンはしぶといかもしれないからそれだけは殺せないかもね」
  「ふぅん」
  鹵獲した兵器は使い物にならない。
  ライフルのような代物はせいぜいハイテクなバット程度だ。
  武器は限定されている。
  だけど少量とはいえ武器はある。
  視線が私に集中する。

  「ソマー、ロボット工場に行くけど同行してくれる?」
  「いいわ。連中の技術に興味があるし」
  「技術に?」
  「こう見えて私は機械に詳しいの。プロテクトロンなら目を瞑っててもバラして組み立てられる。一緒に行くから先導して」
  「もう1人必要なんだけど」
  「あたしが行くわ」
  手を挙げたのは赤い服の女性。
  BOSだっけ?
  組織名なのかはよく分からないけどBOS所属、らしい。ソマーの説明では技術者。技術者が欲しいと思ってたところだから丁度良い。
  「えっと、名前は……」
  「スクライブ・エンジェルよ」
  「名前?」
  「スクライブは……まあ、役職のようなもの。エンジェルは名前。今更だけど自己紹介ってわけね。よろしく、ミスティ」
  「よろしく、エンジェル」
  私と同行するのはソマーとエンジェル。
  目的はロボット工場の破壊。
  もっとも可能なら敵のロボットを鹵獲してこちら側の戦力に使いたいとも考えてる。エンジェルは適任だ。
  まあ、ソマーも詳しいとは想定してなかったけど。
  彼女を同行させようと考えたのは戦力としてであって技術者目当てではなかった。もちろん都合が良いけど。
  「ソマー、コンバットショットガンを装備して。エンジェルは小型拳銃二丁、それとそれぞれグレネードを二個ずつ携帯して」
  「了解」
  「分かったわ」
  派手に暴れるとしよう。
  派手にね。
  「エリオット」
  「何だ」
  「ポールソンとそこのマフィア連れて貨物室に行って。とりあえず目ぼしい武器を入手、その後にエンジンコアに戻って待機」
  「制圧は、その、しないのか?」
  「人数ではこちらは劣ってる。ゲリラ戦で行きましょう」
  「分かった。そうしよう」
  少人数で勝つ為の法則。
  一気に勝負を付ける必要性はまるでない。小規模な戦いを何度も行い、一定の戦果を挙げたら撤退、敵が追い掛けて来たら逃げて、挑発して、
  隠れて、翻弄して敵を蹴散らす。勝っても逃げる。あくまで小さな勝利でいい。それが連続すれば最終的に勝てる。
  とりあえずの目的。
  それは一定水準の武器の確保。
  武器の確保が今後の展開の為の前提になるわけだから頑張ってもらいましょう。
  「ミスティ、その、武器の配分は?」
  「決めてあるわ」
  エリオット達にはそれぞれ小型拳銃一丁ずつ。戦いが目的ではないけど、万が一の場合も想定してグレネード一個ずつ携帯。
  「保安官、俺にはその銃は必要ないぜ」
  「ポールソン?」
  「俺は自分の持ってる」
  リボルヴァー拳銃を懐から取り出すポールソン。弾丸も持っているらしく手のひらを広げて私に見せた。
  かなりオールドな拳銃だけど、銃は銃だ。
  バリア展開しない限りはエイリアンでも殺せると思う。エイリアンは肉体的に人間より脆弱、そして人間もポールソンの銃で簡単に死ぬ。
  つまり相手を殺せないわけはない。
  「マフィア、ところで名前は?」
  「Mrクラブだ。言っとくけど舐めた事はするな、カポネだって俺様には一目置いているんだからな」
  「ふぅん」
  カポネって誰?
  何気に禁酒法時代の人間っぽいけど。
  民間医、侍、リベットシティの兵士、そしてサリーはここで居残り。残った武器でここで待機。
  心許ない?
  まあ、そうね。武器も残り物だし戦力的にも侍と兵士以外は戦闘員ではない。サリーに関しては完全に子供だし。一応ここは他の区画と
  全て繋がる場所だし展開的には一番の激戦の場所となる可能性がある。
  人数としては充分ではない。
  「お医者さん、名前は?」
  「サムソンだ。ドクター・サムソン」
  眼鏡のアジア系の初老の男性。
  「兵士の人の名前は?」
  「私はリベットシティ保安第3分隊所属、ハークネス隊長指揮下のローズ」
  「よろしくローズ。エリオット達は持てるだけ武器を入手したらすぐに戻ってくる。それまで全員ここで待機。ローズ、指揮して」
  「分かったわ」
  とりあえずこれで全員の行動は決定した。
  ……。
  ……ああ。いや。
  サリーは大抵の事はなんでも出来そうだし彼女にも役目を与えるとしよう。
  この中で一番船に精通してる。
  その知識、頼りになる。
  「サリー、あなたも働ける?」
  「私も?」
  「ええ」
  「ほんとにっ! 私にも役目くれるの? まっかせてっ! 何すればいい?」
  「敵の通信を妨害して」
  連携を奪いたい。
  「それだけでいいの? テレポートジャマーも展開できるわよ? ここに直接飛んで来るのを阻止してあげるわ」
  「……マジで?」
  「うん」
  「……」
  すげぇ。
  それが可能なら相手の行動を制限出来る。
  「ローズ」
  「何?」
  「ロボット工場通じてる扉と貨物室に通じてる扉以外の扉にバリケードを構築。敵を極力入れない様にして」
  「分かったわ」
  これで全員の行動が決定した。
  私&ソマー&エンジェルはロボット工場の破壊、そして利用可能であればロボットの鹵獲。
  エリオット&ポールソン&Mrクラブは貨物室で武器や物資の確保。
  ドクター・サムソン&ローズ&サムライマンはエンジンコアで待機。サムライマンは、まあ、作戦分かってないかもしれないけど。
  サリーは通信の妨害とテレポートジャマーの展開。
  「よしっ! 行くわよっ!」


  行動開始っ!